リマ

 リマに着いたのは、現地時間の22:00時頃。タラップを降りると、リムジンバスがいるわけでもなく、コンクリートの上を歩いて空港ビルに向かう。

まとわりつく様な暑さだ。砂漠地帯ではあるが、太平洋の水分をたっぷり含んだ霧が、リマの夜を包んでいるらしい。

 空港の建物は、国の玄関と言うには少し殺風景だと思う。免税店に至っては、場末の倉庫の中かと思う程であった。別にカネを掛けろとは言わないが、もう少し小綺麗にしたら?

 入国検査が終わり、スーツケースを受け取った後、荷物検査を経て外に出るのだが、この空港では、荷物検査の手前で一人一人ボタンを押し、緑のランプが点けばそのまま通過でき、赤が点いた場合は中を調べられるのだそうだ。その赤と緑の判定は、神のみぞ知るらしい。

 しかし幸いなことに、私達日本人のツアーは、検査も無く別の通路から出してもらえた。ちょっと残念だったけど。

 若い日本人男性のガイドの相曽氏が、小型バスの運転手と共に迎えに来ていた。私は地図でしか見た事がないリマ市の構造をこの目に焼き付けようと、一番前の席に陣取った。

 空港の駐車場の出口では、もう23:00をまわったというのに、二人の子供が料金所の手前で一旦停止した車に駆け寄って、両替のご用聞きをやっている。これがガイドブックに書いてあった「カンビオ(モグリの両替屋)」か。聞くところによれば、市中の銀行よりレートはお得なのだそうだ。

 リマの市内に向かって、バスはいきなり時速70`以上のスピードで走りだした。乱暴な運転手だなあと思ったら、他の車も同じ速度で走り回っている。

暗くてよく見えないのだが、走り回っている車の半分は、どれもスクラップ寸前の様相を呈していて、おまけにマフラーもぶっ壊れているので、バリバリバリと暴走族のオンパレードだ。

 互いにクラクションを鳴らし合っている。どうもこれがペルーの日常らしいが、日本に来てこの調子でやられたら、たちまちヤクザとトラブルを起こすだろうな。

 さっきスクラップ寸前と書いたけど、どう見てもスクラップが走っているとしか思えない様なのもたくさん見かけた。バスは赤信号を気持ち良く無視して走る。こちらでは、23:00を過ぎたら、左右に迷惑を掛けなければ、赤で止まらなくても良いそうだ。

 周囲の市街地に向かう景色は、何とも形容し難い。土地が乾燥しているのがよく解る。

 建造物や塀は、日本では廃虚としか思えないような外見なのだが、一つだけ違うとすれば、なんとなく人間の気配を感じるというところか。 十分とは言えないにせよ、水銀灯の街灯が一定間隔で広い道を照らしている。よく見ると、けっこう人が歩いているようだ。

 信号のある交差点では、ワゴン車の乗合タクシーの乗降が絶えない。車掌兼客引きが、その行き先を大きな声で告げている。ここの住民は、せっかちなのであろう。乗降の際に、きちんと停車しているのを見た事がない。駈け乗り飛び降りが基本の様だ。

 やがてわりと綺麗な住宅街を通過した。基本はコンクリートむき出しの2階建てばかりで、鉄筋が髭のようにだらしなく突き出ているあたりは、コストダウンの為だろうか?

 住宅街を抜けて、ミラ・フローレスという、ガイドブックによれば比較的治安の良いという地区に入った。それでも街路の暗がりで、銃を持った兵士が立っているのを見ると、改めてこの街の治安の悪さを思い知らされてしまう。そういえば、どの家も一階の窓は鉄格子がしっかりはまっている。

 街中の電灯は、殆どが白熱電球を使用しており、効率の良い蛍光灯が本当に少ない。この電球も日本で普通見かける内部が擦りガラスになったものでは無く、光るフィラメントが見えているやつで、更に照度の面では効率が悪いので、電球の数は多いのにいまひとつ街が明るくならない。きっと蛍光灯は高価で手に入りにくいのだろう。

 バスがホテルに着く。殺風景な部屋なので、電話帳をペラペラめくってみると、結構絵が多い。最終ページには、男性用避妊具の装着方法が、男性器の絵とともに書いてあって、日本との性に対する考えの違いを知る。

 風呂はバスタブかと思ったら、ただのシャワーだけである。

この街は本当に雨が降らないらしい。何故なら、窓に隙間が多く、これでは少し降れば、たちまち部屋の中まで濡れてしまう。さて雨の心配は無い様だけど、外の車の音が「バリバリバリ」とうるさい。

 その夜も眠りは浅い。見た事も無い様な遺跡の夢を見た。

 暑いはずなのに、なんとなく毛布がヒンヤリしている。


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